NEWSお知らせ

【特集】目の前のチャンスに手を挙げる勇気 Fe/68kg級 松山楓選手|明治杯2024

※明治杯特集
📷 @__kotograph__

今回の明治杯ではじめて全日本の表彰台に上がった法政大学・松山楓選手。冬春あわせて4度目の挑戦にして念願叶った彼女であったが、その余韻に浸ることもなく試合2日後には成田空港から日本を後にし、オセアニアの小さな島国”パラオ”に向かった。

目的はパラオの女子レスリングの強化である。きっかけは、日本からロシア、さらにはサモアへ渡りサモア国籍を取得して今回パリ五輪への切符を勝ち獲った赤澤岳氏のSNSでの呼びかけだった。

赤澤氏のこの投稿を見るや、海外に興味を持っていた彼女はすぐに赤澤氏にコンタクトをとった。このあたりの行動力は、宣伝した張本人の赤澤氏を思わせるところがある。学校側の心配もあっただろうが3週間という期間を設けて、松山選手の強化スタッフとしての採用が決定した。

松山選手は神奈川県出身。専修大学キャンパス内で木村元彦氏が立ち上げたチームバイソンズの第1期生である。「諦めない心」「挑戦する心」は、ちびっこ時代に木村監督が何度も何度も選手に問いかけていたこと。今回発揮したチャレンジャー精神は、もともと明るい性格である彼女の素質と、バイソンズ、日本工業大駒場高、法政大学のレスリングキャリアの中で培った素養によるものだろう。

写真:ジュニア時代の仲間とともに木村監督に愛ある檄を飛ばされている貴重な一枚

パラオでレスリング指導真っ最中の彼女から、ご両親へたくさんのメッセージが届いている。どれも楽しそうであり、現地での充実を思わせるものばかりだ。話によれば、パラオレスリング協会会長の娘さんと同い年にあたり練習パートナーとして親交を深めているとのこと。松山選手から「JICAに興味がある」と申し出たところ、JICAの事務所にも案内してもらえるとのことで、現地でしっかりチャンスを繋いでいる様子だ。素晴らしい引き寄せである。

JICAといえば、任務終了後もセネガルに残りレスリングの普及活動を行なっている魚住彰吾氏の活躍が目覚ましい。彼のように今回の旅が人生を大きく変えるキッカケになることも十分考えられる。人生は本当に無限大だ。

レスリングを極める者もいれば、レスリングをきっかけに人生の幅を広げる者もいる。どちらも素敵であるが、今回の松山選手がとった行動のように「目の前のチャンスに手を挙げる勇気」を今一度見直し、人生の幅を広げていきたいものである。

松山楓 選手からメッセージが届いています 2024年6月4日現在

最初に赤澤さんの投稿を見た時、迷わず「行きたい」と父に言いました。パラオに来て約1週間経ちましたが、現地での生活は、多くの人のサポートによってとても充実したものになっています。
3月には大学のプログラムでベトナムに日本語教育ボランティアとして参加しました。自分の興味のあることに挑戦できる環境があること、とても幸せなことだと実感しています。将来はレスリングを通して国際協力をしたいと考えています。今回の活動の中で、現役JICA隊員の人と交流することもでき、たくさんの刺激を受けながら生活しています。大学生になってから、将来についてを何度も口に出すようになり、色々な挑戦をすることができています。

パラオの女子レスリングは競技者が片手で数えるほどしかいません。パートナーであるUilau Ilebrang TARKONG選手は国を代表する選手です。パラオは過去に日本に統治されていたこともあり、今でも友好関係を築いています。多くの人が日本語を話すことができたり、パラオ語の中にたくさんの日本語が残っていたり、日本が建てた橋があり、人々の生活の中には日本が溢れています。今回の活動を通して、私自身がパラオと日本の架け橋のような存在になれればと考えています。そして、彼女の成長はもちろん、パラオレスリングの発展に少しでも貢献できれば嬉しいです。残り数日、帰国まで自分のやるべきことを全うし、自分自身も成長して帰国できるよう頑張ります。そして、改めてこのような機会を与えてくださったパラオレスリング協会、赤澤さん、ご理解いただいた大学関係者様、そして両親に感謝したいです。