皆さんはこの男の存在をご存知だろうか
第15代ミドル級キング・オブ・パンクラシスト・内藤由良である。
(リバーサルジム横浜グランドスラム所属)
デビュー以来6戦無敗。第4戦目のフェルナルド・マツキ戦のフルマーク判定勝利を除いて残りの全試合をKO・一本で勝利している。
現在、総合格闘技(MMA)の日本重量級で最もUFCに近い男だ。
彼のバックボーンはレスリングである。
8歳のころ、プロレスラーの鈴木みのるが主催するレスリング道場の門を叩いた。なお、鈴木みのるは、内藤由良が主戦場とした団体・パンクラスを立ち上げた一人であり、鈴木にとって内藤はまさに秘蔵っ子といえる存在だろう。
普通のレスリング教室とは違い、鈴木みのるや元パンクラス王者の川村亮をはじめとした格闘家がまわりに沢山いる環境で育った内藤は、だれに言われるでもなく自然と格闘家を目指すようになっていった。当時の環境要因が間違いなく現在の内藤を形作っている。そして、幼少期にレスリングと合わせて空手を習っていたが、中学に進学するタイミングで空手よりもレスリングを主軸にして取り組む進路選択をした。
(写真:高校時代の内藤 https://www.japan-wrestling.jp/2014/08/04/54202/)
この進路選択において、鈴木みのるから「まずはレスリングを極めろ。レスリングは格闘技の土台になる」という助言を受けたことが大きかったと内藤は語る。
余談だが、格闘家になるためにレスリングを極めるというステップは、現UFCファイターの中村倫也と共通する部分であり、意外と珍しいキャリアである。
今と違い、当時日本国内でレスリング出身の総合格闘家が活躍していた背景はほとんどなく、その中での鈴木のこの助言には流石の鋭さを感じる。この助言の背景には、当時から海外ではレスリング出身選手の活躍が目立っていたことがあるだろう。
紳士スポーツと言われるレスリング技術の中には相手を「仕留める」技は含まれていない。しかし、打撃も寝技もレスリング技術を軸に展開することで常に優勢をとることが可能になる。簡単に言葉にしてしまうならば『鋭いタックルがあるから打撃が決まる』という具合だ。このことは、プロ格闘家となった内藤由良の勝利がパウンドを含む3KO、寝技での勝利2つというオールラウンドな実績で証明がつく。
話をレスリング時代に戻す。
内藤由良のレスリング戦績は、全国少年大会4,5年生の時に2連覇。中学高校では全国優勝を逃すものの、各世代で全国2位を記録している。ちなみに、当時決勝で立ちはだかったのはスーパー高校生の山崎弥十郎だった。高校重量級の熱い時代である。
神奈川県の磯子工業高を卒業したのち国士舘大学へ進学。ここでアトランタ五輪代表の和田貴広から4年間にわたりレスリング技術を学ぶことになる。国士舘大学2年生のときにJOC杯で優勝を飾りキッズ以来の全国チャンピオンに返り咲いた。その後も明治杯全日本選抜選手権で表彰台に登るなど、一流のレスリング技術を大学4年間で着々と身につけていることが戦績から伺える。
(写真:日本レスリング協会より https://www.japan-wrestling.jp/2016/04/27/89975/)
そのようにして国士舘大学で4年間レスリング漬けの日々をおくったあと、内藤は晴れて幼少のころからの憧れであった総合格闘技の世界に飛び込むことになる。そしてその舞台に選んだのは恩師である鈴木みのるが立ち上げたパンクラスだった。
先にも記載した通り、現在国内無敵で対戦相手がいない状況の内藤であったが、今年の6月にパンクラス側が海外強豪選手を招待してタイトルマッチを組ませた。内藤にとってはこれまで戦ってきた選手とは一段レベルの違う相手であり、勝利して世界にアピールしたいところであったが、不幸にも入国問題により直前で対戦相手が変更。とはいえ、代打で送り込まれたアリ・カラダギィは188cmの長身、キックルールで38勝をマークしている全く油断のならない相手である。
開戦前はどんな試合展開になるか注目を集めたが、蓋をあけてみれば1ラウンドパウンドKO。アリ・カラダギィの得意の打撃をレスリング技術で無効化した内藤由良の圧勝だった。そして内藤が勝利後にマイクで語った言葉がこれだ。
「自分が行くところはUFCしかありません。皆さんの声も力になります。ぜひバックアップしてもらえれば嬉しいです。ダナ(UFC代表)、ショーン(UFCスカウティング)、アイム・ナンバーワン・ジャパニーズミドルウェイトファイター!」
内藤の目にはもはやUFCしか映っていない。たとえ世界最高峰のUFCとはいえ他団体への移行をマイクアピールすることは簡単に許されることではないはず。ここまで圧倒的勝利を収めパンクラスに貢献してきた内藤由良の特権と言えるだろう。
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そしてついに夢が動き出す…
UFC登竜門大会『ダナ・ホワイト・コンテンダーシリーズ2024』に出場することが正式に発表された。内藤由良の勝利後マイクの声が届いた形になる。たくさんの関係者が内藤のUFC行きを後押ししたに違いない。
本日9月9日の夕方にアメリカに向けて出発する。内藤由良のUFCをかけた一戦が目前まで迫っている。
開戦は9月18日(水)日本時間 午前9時
UFC FIGHT PASS で視聴可能
https://welcome.ufcfightpass.com/region/japan
日本重量級の星として、是非とも夢を勝ち獲ってほしい。
これまで内藤由良の試合ウェアをサポートしてきた身として、レスリングアスリートの活躍を全力応援するとして身として、MAMOはこの男の勝利を心より祈っている。